32 幸せの在処

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 空港が近づいてくる駅の名前が聞こえると、もうすぐ離れ離れになる切なさが込み上げてくる。二人ともそれに耐えるように、無口になった。  空港に到着して電車を降り、出発ロビーへ……と思いきや、遼太郎がとっさに前を歩くみのりに声をかけた。 「先生!どこ行ってるんですか?出発ロビーに行かないと!」 「……えっ!?」  みのりが慌てて周りを見回して、案内表示を確認する。あり得ないような迷い方をするみのりに、遼太郎は少し呆れたように息を漏らす。 「大丈夫ですか?先生。……ちゃんと芳野まで帰り着くのかなぁ。」  みのりは真っ赤な顔になって、立ち止まった。 「大丈夫だもん…!」  口を尖らせ眉間に皺を寄せて、遼太郎を一瞥するとプイと顔を逸らす。そしてそれきり、目を合わせてくれなくなった。 「搭乗手続きしてくるから。」 と言うみのりの表情も、どこか硬くぎこちない。 ――……先生。怒ったのかな……?  遠ざかっていくみのりの背中を見ながら、一抹の不安が遼太郎の中に過る。でも、いつものみのりならば、あのくらいのことで気を悪くすることはない……はずだと、遼太郎は思う。そんなふうにあれこれ考えながら、みのりを待った。
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