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それなのに、恋い焦がれた遼太郎には好きな人がいて、自分は何一つその人には敵わなかった。
それでも、陽菜はあきらめきれなかった。あんな一回りも年上の人よりも、自分の方が絶対に遼太郎にふさわしいと思った。遼太郎が自分のものにならない理不尽さが、どうしても許せなかった。
彼女になれるどころか、こんなふうに憎まれてしまって、陽菜の自尊心はズタズタに引き裂かれた。
陽菜の心は乾いて固くなり、何も感じられなくなっていた。なんの気力も湧かず、大学に行くこともどうでもよくなってしまっていた。
「……私のことなんて、『殺してやりたい』って思ってるくせに、どうしてそんなこと聞くんですか?」
涸れた心を映したような陽菜の反応に、遼太郎も次の言葉が見つけられなくなる。しばし沈黙した後、努めて冷静に考えて、口を開いた。
「確かに、君のことは許せないよ。でも、殺したいなんて、今は思ってない。」
「だったら、何しにこんな所まで来たんですか?私になんか、会いたくないはずです。」
逆ギレのような開き直りのような、陽菜のこの態度。遼太郎の胸の底に微かな怒りが再燃したが、ここでそれを爆発させたら、ここまで来た意味がない。
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