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「……俺はただ、先生のことを守りたいだけなんだ。」
改めて宣言するような遼太郎の言葉に、陽菜もその表情に苛立ちが浮かぶ。
「そうすればいいじゃないですか。大好きな先生の側を片時も離れないで、守ってあげればいいじゃないですか。」
「そうすることで、先生のすべてが守れるんなら、俺のすべてを投げ打ってでもそうしてる。」
言葉の端々に見える遼太郎のみのりへの想い。それをもう一度知らしめるために、遼太郎はわざわざこんなところまで来たのだろうか……。
遼太郎の目的がよく見えてこず、陽菜は険しい顔で遼太郎を見据えた。遼太郎もそんな陽菜のいらだちを読み取って、本題を切り出した。
「ここまで来たのは、君に確かめたいことがあったからだ。聞きたいことは、一つだけ。君はまだ、俺のことを殺したいって思ってるのか?」
その率直な問いは、鎧で覆いつくしていた陽菜の心の隙を突いて、いきなりその奥底に切り込んできた。
自分のことなのに、自分の心が解らなくなる。今目の前にいる、恋い焦がれたこの人を、殺したいほど愛しているのか、憎んでいるのか……。
「私が『殺したい』って言ったら、狩野さんはどうするんですか?」
遼太郎になら、殺されてもいい……。そう思いながら、陽菜は問いを返してみる。
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