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後は、ホイル焼きに火を入れるだけの状態にしておいて、居間の真ん中に座り込んで、遼太郎の帰りを待つ。
遼太郎が喜んでくれる顔を思い描いただけで、みのりの顔も自然にほころんでくる。こうして夕食を作って遼太郎を待つなんて、旦那さんの帰りを待つ奥さんみたいで、ドキドキしてときめいてしまう。
――いつかは、毎日こうやって、遼ちゃんの帰りを待つ日が来るのかな……。
と、将来のことを想像してみるが……。
みのりは、自分のあまりにも身勝手な妄想を、即座に打ち消した。
遼太郎が今のように、ずっと好きでいてくれる確証はない。
みのりが遼太郎の歳から今までの十二年間の中で、何度か出会いと別れがあったように、遼太郎にもそんな紆余曲折があるはずだ。その時々は、永遠のように感じていた想いも、時が過ぎてゆくにつれて移り変わり、過去のものになってしまう。
……それに、遼太郎が結婚を考えられる年齢になる頃には、みのりは歳を取り過ぎているだろう。子どもを産めるか分からない相手との結婚は、周囲も反対するはずだ。
遼太郎と付き合っていくうえで、どうしても伴ってしまうこの不安。この不安を受け容れられないのであれば、遼太郎とは一緒にいられない。
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