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しかし、しばらくして遼太郎はハタと気がつく。搭乗手続きをするだけにしては、時間がかかりすぎていた。
もしかして、みのりは本当に迷ってしまったのではないか。それとも、もう手荷物検査を受けて搭乗口の方へ行ってしまった……?遼太郎はキョロキョロと辺りを見回して、みのりを探し始める。
いくらなんでも、何も言わずに行ってしまうわけがない。チェックインカウンター、手荷物検査のゲート、……女子トイレの前。探し回っても姿が見えず、遼太郎はスマホを取り出して、みのりへ電話をかけてみる。しかし、みのりは電話に出てくれない。
途方に暮れて、遼太郎が出発ロビーの真ん中で立ち尽くした時だった。壁際、大きな広告の前で、背中を向けているみのりを遼太郎の視線が捕まえた。
安堵のため息をつき、スマホをジーパンのポケットに突っ込みながら、遼太郎はみのりへと歩み寄った。
「先生?」
声をかけると、みのりはピクリと反応したが、振り向いてくれない。そんなに怒らせてしまったのか……?と、遼太郎は恐る恐る首をかしげてみのりを覗き込んだ。
「……!」
遼太郎が目にしたのは、うつむいて懸命にハンカチで涙を拭っているみのり。遼太郎は言葉をなくして、みのりの隣に立ち尽くした。
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