たんぽぽ屋さん

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 やっぱり、この『たんぽぽ屋』は普通の花屋じゃなかったんだ。身近な人の死に悲しむ人の話を引き出して、その思いと共に魂を空へ還すためのたんぽぽを売る。自身をピアヘルパーだと言ったお花さんはカウンセリングとは別物だとも言ったけれど、誰かを助けるためにやっているという点ではどっちも同じだ。  考えてみると、確かにただ話を聞いてもらうというのは心に溜まった黒いもやを晴らすことなのかもしれない。友達と話していてよくあるのだ。まだ話したいことがあったのに、友達が違う話題のことを口に出したからそっちの話をして、楽しくないわけじゃないけどほんの少しだけ残念な気持ちを感じること。 「その、ずっと話を聞くだけって大変じゃないですか? じっくり話を聞くのに、言葉を挟んだりしないんですよね。思ってること、伝えられないんですよね」 「言葉がなくたって伝わるわ。目線で、態度で、人の気持ちというものはしっかり伝わるの」  小さく笑って、お花さんは私の目をじっと見つめた。 「言葉は気持ちを吐き出すために最適よ。でも、言葉を使わなくても気持ちを伝えることができる。どうしようもない気持ちを言葉で外に出して、本当に伝えたい気持ちを態度で示すことができたなら……それは、落ち着いた女性になったと言えるのでしょうね」  あ。お花さん、私が理解できるようにわかりやすい言葉を選んで伝えてくれてる。 「さて、そろそろ休憩は終わりにして、美咲さんにはピアヘルパーの練習をしてもらおうかしら。今日はもうお客様の予約もないし、お掃除しすぎても仕方がないものね」  お花さんが立ち上がるのは、話を切り上げる動作のようにも思えた。  だから、私は慌てて言葉を口にした。 「あっ、あの、お花さんって若いころは何の仕事をしていたんですか? カウンセラーをやっていたから、今もこうして誰かの助けを……」  気になっていたことを尋ねると、お花さんは両手の人差し指を重ねて×を作った。
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