フラッシュバック

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 僕はかつて、無鉄砲な大学生だった。  自分の力を以ってすれば、この世の不条理を変えていけると心の底から信じていた。  一人の社会人として生活している今となっては恥ずかしい思い違いなのだけど、僕は本当にそう思っていたのだ――昔話。  その日、僕はたまたま後輩の仕事の後始末をするために休日出勤をしただけだった。その時、僕の目に、閑散としたオフィス街の風景が映ったのだ。  平日はあんなに騒々しい街なのに、日曜日になるだけで、街全体がまるで廃墟のようにひっそりとしていた。仕事をするためだけの街に、休日に足を運ぶ物好きはいないのだ。  街には街の役割がある。そして、人には人の……。  「大学生の僕」が目を覚ましたのは、そんな物悲しい風景が原因だった。
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