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一歩分だけ足場があってその先は空中、という、屋上の縁に居つくようになったのは、たぶん、部活がつまらなくなってからだ。
私はマンドリン部というややマイナーな部活に入っている。
元々音楽を聴くのは好きだったけど、入学式で見たマンドリンという楽器が私たち新入生の為に合奏するのを聴いて、まんまと恋に落ちた。
丸いフォルムのこの撥弦楽器の調弦は、ヴァイオリンと同じG-D-A-E。ただし、八弦四コース。つまり、同じ音の弦が二本ずつあるのだ。一音を出す為に、二本の弦を同時に弾かないといけない。それからもう一つの特徴として、ギターよりもずっと音の減衰が早いという事も挙げられた。余韻なんてほぼ生じないので、音を長く延ばせない。だから、トレモロで弾く。
このトレモロが、好きな人と嫌いな人がいる。どんなに上手い人でも完全に消す事は難しい、ぱちぱちというピックの音が、私は好きなタイプだった。
だけど入部して二年経つ今になって、分かり始めた事がある。―――私にこの楽器の才能は、全く、からっきし、これっぽっちもない、って。
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