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目が覚めて、いつの間にか寝ていたことにびっくりしたし、いつの間にか安っぽいプリントの束が目の前にあることにもびっくりした。表紙には「国語」と書いてある。痛みのある顔を少し持ち上げた。どうやら片頬を机に押しつけながら寝ていたようだ。膝も痛い。
それから、顔を上げて再三びっくりした。開けた眼に飛び込んでくるむさ苦しい肩の山。せっかくの行燈の明かりが遮られている。
私は浮かした頬を慌ててまた机で潰した。寝たふりをしながら、薄目で様子を伺う。
彼らは、静かだった。私が寝ているこの巨大な机を囲んで、立ったままプリントを
熟読している。全員似たような学ランに身を包んでいるけれど、襟元にある校章は微妙に違って見えるから、それぞれ違う学校の生徒なのかもしれない。男子学生なんて、こんなに間近で見たのは初めてだ。対面に居た薄顔の男の子の様子を特に注意して見てみると、彼はプリントの一枚一枚をじっくり読んでは捲り、また前のページに戻ったりしていた。
一体何を読んでいるのか。
起きているとバレないよう、慎重になりながら、傍にあったプリントをそっと捲る。
文字。カギ括弧。物語を切り取った文章のようだ。
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