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「俺は仲直り出来る派!どう考えても主人公はへたれだし、そんなに長く喧嘩とか続けられないタイプじゃない?」
「うん。僕も三沢に賛成かな」
今度は私の斜め前で、隣り合った三人が話し始めた。
「主人公がへたれって判断はどこで?」
「それはホラ、雰囲気」
「真面目に答えてよ」
「分かった分かった、ほらプリント二枚目、十行目の地の文とか」
「あとこの台詞もへたれ感出てるよね。逆に兄は正論をぶつける優等生タイプみたいだから、主人公が兄に譲歩して仲直りするって展開が一番自然だと思うよ」
今しがたまで静かだった男子生徒たちが、激しい舌戦を繰り広げている。私は唖然として彼らの熱気を眺めることしか出来ない。しかし、視界の中で正面の男の子が小さく声をあげた時、私の気持ちも動いた。
「俺は、兄から主人公に迫るまで解決しないと思うけどな。主人公は絶対に謝れないと思う」
「私もそう思う!」
私は自分にいくつもの視線が向けられるのに気付いたけれど、それどころではなかった。彼の意見は、ついさっきまで物語に浸っていた私の、確かに芽生えていた情熱に火をつけた。
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