タイトルは一番最後に

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数秒にも満たない不可思議な感覚のあと、私が立っていたのは森の中。きっとマメィが魔法を使って追い出したんだ。  手を開くと、そこにはマメィから渡された小瓶がある。これを飲めば私の持つ不思議な力は消える。そうすれば異形に近づかなくてすむけど、もうみんなの気配を聞き取ることができない。  近くにあった切り株に腰かけて、私はケータイを取り出した。カメラロールに並ぶたくさんの思い出はしっかりと残っている。数えきれないほどたくさんの写真が記録している思い出。これが増えれば増えるほど、私は人間じゃなくなっていって……。  私は、思い切って小瓶の中の液体を飲んだ。でも、それは決して諦めたからじゃない。  カメラロールの写真をにらみつけ、叫ぶ。 「ずっと私を苦しめてきた力のくせに、あんなちょっとの薬で消えるなんて許さないから! お母さんに気持ち悪いって言われて、クラスの子からは仲間外れにされて、いっぱい、いっぱい苦しめたくせに……今更消えたらめちゃくちゃ怒るから!」  思いっきり叫びながらも、心はなぜか冷静だった。見えない力に対してどうやって怒るんだろ、なんて考えながら、不思議な気持ちでケータイの写真を見つめる。  画面に表示されているのは、マスターたちと一緒に撮った一枚の写真。確かに、首のない幽霊や魔女、首の三つある番犬の中にセーラー服の女の子が映っているのは変だ。  でも、私にとってはこの空間が幸せだった。 「っ!」  なのに、思い出は儚く消えていく。ちゃんと保存されていたはずの写真はどんどんと黒くなっていって、マスターが作ってくれるおいしい料理も、見慣れたマメィの顔も、ロスがしっぽを振ってとびかかってきたときの写真もなくなっていく。私の目じゃ、見えなくなっていく。
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