2話

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『私の名前は高崎真宙』 自慢じゃないが私は、乙女ゲームをやる時は本名でやっている。その方が感情移入できるし、名前を呼んでくれる機能が付いていると呼ばれる度に萌えるからだ。 『乙女ゲームが好きで、BLが好きな普通の高校生』 ……え? 『二次元の世界に夢中でよく妄想しているので友達からは残念なオタクだと言われている』 これって……まんま私のことじゃない!? どういうことだろうと考えながらもAボタンを押してゲームを進めていく。 『ゲームの中のイケメン達に夢中になったり、同級生の男子二人でいけない妄想をしたりとそれなりに楽しい毎日。でも――』 画面が黒くなる。 『現実の世界はつまらない』 突然携帯の着信音が鳴り心臓が跳ね上がった。 ディスプレイには知らない番号が映し出されている。誰だろう?と不思議に思いながらも通話ボタンを押し耳に当てる。 「も、もしもし……?」 「高崎さん?僕、佐藤だよ」 電話の相手は佐藤君だった。 どうして私の番号を知っているのかとか、このゲームの内容は何なのかとか訊きたいことは沢山あるのだけれど混乱して上手く言葉が出てこない。 「急にごめんね。そのゲームの説明をしておこうと思って」 佐藤君は声までイケメンだ。優しい声色に耳がくすぐったくなり、心臓の音が煩くなった。 「ゲームのクリア条件は告白した相手とキスをする事だよ。最初の内は慣れないと思うからサポートの役割も兼ねて僕も一緒に行くよ」 「え?」 行くって、何処に? 訊ねる前に「頑張ろうね」と優しく囁かれ、電話は切れた。 頭の中が疑問符で一杯になっている。でも考えても答えは出てこないのでとりあえず目の前のことから解決しようと携帯をベッドに投げ捨て再びゲーム機を手に。 『私は恋がしたい』 画面の文字の下には『したい』と『したくない』という選択肢が。少し迷ってから『したい』を選んだ瞬間、私は意識を失った。
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