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気付いたことがある。
有り得ない事だと思うが、ここは現実の世界ではないみたいだ。だって、私は女だったはずなのに……男になっていたからだ。男子の制服を着ている事に気付き、胸を触ってみて絶句した。そこには細やかながら膨らみがあったはずなのに、真っ平らになっていたからだ。股間には怖くて触れていない。興味がないわけじゃないけど、私にはまだ早いと思うのだ。
ここは佐藤君が作ったゲームの中の世界なのだろう。信じられないがそう考えた方が納得出来る。
一度は男になってみたいと思っていたけど、まさかこんな形で実現するなんて思わなかった。今この状況を楽しめる余裕が私にはない。
休み時間になり、泣きそうになりながら佐藤君に助けを求めた。
なるべく人目のつかない場所を探したけど思いつかなくて、前と同じ様に私たちは裏庭にやってきた。生徒の姿が全くないわけじゃないけど、教室で話すよりはマシだろう。
「この世界は君が大好きな乙女ゲームの世界だよ。主人公(ヒロイン)は君の友達の白鳥舞さん。彼女と結ばれるのも、他の男と結ばれてBL展開にするのも君次第さ」
「な、何で私は男になってるの?」
「その方が面白いから」
にっこり笑顔で言われてうっかりときめいてしまったけど、酷い理由な気がする。
「僕は君の親友って設定になってるからいつでも相談に乗ってあげられるよ。君が僕とBL的な展開を望んでるなら協力してあげてもいいし」
頬に手を添えられ悲鳴を上げそうになった。
「で、でもっ!私、中身は女だし……」
いくら体が男になっているとはいえ中身は女のままなのだ。男の子が苦手なのには変わりない。
「ここは現実の世界じゃないんだよ。君はこのゲームを楽しんだらいい」
顔を寄せられ思わず目を閉じた。こんな近くで佐藤君の顔を見たら心臓が壊れてしまいそう。
「そうしないと戻れないしね」
ふーっと唇に吐息が吹きかけられた。
駄目。倒れそう……。イケメンは何をしても私の心臓に悪い。
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