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「実はちょっとした趣味であるゲームを作ってみたんだけど、そのゲームのテストプレイヤーになってくれないかな?」
「ど、どうして私に?」
「それは高崎さんが、乙女ゲームが好きな腐女子だからだよ。このゲームにはそう言った要素が組み込まれてるんだ。今好きな人はいないんだよね?このゲームを通じて、君がどんな恋をしていくのか知りたいんだ。協力してくれないかな?」
どうして佐藤君が私の趣味について知っているのかは分からないが、こんな私だからこそ頼んでいるのだと知り協力してあげたくなった。
単純にどんなゲームなのか興味もある。
「私でよければ……」
「本当に!?」
頷いた私の両手を握りながら佐藤君が「ありがとう」と腕を上下に揺らす。
突然触れられ、両手から伝わってくる体温に体が熱くなっていく。離してほしいのだけど混乱して動けないし声も出ない。口をパクパクさせる私の耳元に唇を寄せ、佐藤君が「お礼しないとね」と低く囁く。
お礼なんていいから早く離れてほしい。イケメンに触れられて嬉しいけど心臓に悪すぎる。ここが二次元の世界ならこの状況を喜んでいただろう。でも現実は違う。
私は男の子が苦手なのだ。
「僕が茂野に対して友達以上の想いを持っているってのは正解だよ」
掴んでいた手を離し、人差し指を唇に押し当てながら「内緒だけどね」と佐藤君が微笑む。
ポケットから取り出したカセットを手渡し「じゃあ、宜しく」と彼は去って行った。
取り残された私は絶叫する。
「え?ええっ―――!?」
佐藤君はやっぱり茂野君のことを好きだったんだ!
こんな現実なら……悪くないかもしれない。
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