バイキン型ぼっち

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帰る気満々の俺の目の前に現れた謎の男。 この男、見た目の奇抜さがえげつない。 髪の毛の上半分が赤、下半分が緑、これだけでも相当おかしなスタイルなのだが、極め付けに黄色の天使の輪っかのようなリングが頭に浮いている。 そう、髪の毛などにくっつけているのではなく『浮いている』のだ。 端正な顔立ちがその異質な格好をなんとか中和している。いやごめん、いくら顔が整ってても流石に中和しきれてない。 その格好はやばいぞ、出てくる作品間違っていないか?と今にもメタいこと問い質したくなるレベルでやばい。 なんだ?ファンタジーか?ファンタジーなのか? 俺が『他人に話しかけられたこと』と『実はこの作品がファンタジー路線なのかもしれないこと』のどちらで動揺していいのか迷っている間にも、彼は俺のクラスの人間に話しかけられ、挨拶程度のコミュニケーションを取っている。 フラットに笑顔で話す様子にコミュ力の真髄を目の当たりにした気分になった、眩しい。 「あの、俺 暇じゃないんで……失礼します。」 俺は帰ることで忙しいからな。聞こえるか聞こえないか分からない声量で俺は彼にそう告げると、そそくさとこの場を去ろうとするが、彼がそれを許してくれる筈もなく 「ごめん!少しの間で良いんだ。話、聞いてくれないかな?」 捨てられた子犬のような目で俺に懇願してきた。普段目立たない俺がこんな奇抜なやつに頭を下げさせている。周囲の目線が痛い、断れる筈もなかった。
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