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「……あ?」  あ、やばい。これは関わったらいけないやつでは――と本能が危険を察知するものの。俺は威嚇するように箸を構え、真っ向から男を睨み返していた。 「んだ、てめぇ。何か言いたいことでもあんのか」  男がゆっくりと立ち上がる。大きく一歩踏み出したその瞬間、男は厨房から出てきた女将と鉢合わせした。鼻先に突き付けられる、チャーハン用の八角皿。どろりと濁った女の双眸がサングラスを見上げた。 「お待ちどうさまです」 「お、おう」  女将は華奢だ。男の胸にも届かない。ところが、ヤクザ者はガラムマサラの香りに気圧されるように後退り、大人しく丸椅子に収まった。こんもり盛られた白飯と、堀のように周りを埋めるカレーのルーが実に旨そうである。 「おい、注文と違うんじゃねえか。オレが言ったのは」 「キーマカレーもカレーでしょう」  女将はぴしゃりと言い放ち、皿の隣に茶封筒を叩き付けた。 「どうぞ。今月分です」
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