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「人間の血を摂取しなくても、我々が生きる道はある」
「まさか、あなた達は本当に人工血液とやらを完成させたの? ぞっとするわ、そんな下劣な紛い物。第一、なぜ私達が譲る必要があるの? 数が多いというだけの畜生に」
「――現に敗れただろう。100年前に」
「あれは……っ、お前達のような裏切り者のせいでしょう! そうでなければ、エルバハが豚の群れに負けるはずがない! こんな、豚の群れにまじって己を偽る屈辱に、耐える理由などないわ」
「……貴族として生き、貴族として死ぬことを選ぶか」
「エルバハに死はないわ。消滅があるだけ」
青年は苦渋に満ちたため息をつき、そして――口角を上げた。
「警告はした」
「偉そうな口をきくのね。若造のくせに」
「灰は灰に、塵は塵に」
青年は小さく呟くと、手を水平に伸ばした。
その先にはやはり、長く鋭い5本の鉤爪があった。
「・・・・・・さよなら《ダスヴィダーニャ》。北白川伯爵夫人」
リナト・シュヴァーロフは悲しげに顔を歪ませ、鉤爪を閃かせた。
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