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そして、黒いコートの裾がわずかにはだけて、何かがきらりと光った、
長い刃物に見えた。
息を飲む。
その人物は、一歩こちらへ踏み出した。
――殺される?
だが次の瞬間、火花が弾けるような音とともに鋭い叫び声がして、相手は大きく飛び退いた。
まるで、電気柵に触れたかのようだった。
小春には、何が何だかわからない。
「……おのれ」
呪詛のような低い声だった。
黒装束の人物は、手をもう片方の手で掴んでいた。
その手の先には、長い鉤爪があった。
小春は、目をみはった。
「侮辱の罪、思い知らせてやる」
そう吐き捨てると、人物は地面を蹴って飛び上がり、暗い上空へと飛び去った。
何もかも、想像を越えていた。
黒いシルエットが鳥影のように遠ざかっていくのをただただ眺め、小春は、その場にへたり込んだ。
無意識に、首から下げたロザリオを掴んでいた。
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