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「契約社員募集中……」
どこにでもある契約社員募集の紙だ。時給はそんなに悪くない。月給に換算しても、今の月給と大差はない。いや、そうじゃない。
紗良は半信半疑の顔で神崎を見る。
「なんで知ってるんですか……?」
本当に元神さまかと、紗良は神崎を凝視する。本当に元神さまなら、凝視するなんて恐れ多いが。
女性がパッと顔を輝かせる。
「あら、当たった? 神崎くん、たまに勘が働くんよ。お姉さんが朝に来たとき、『あのお姉さん、うちで働くことになる』って言いだしたんよ。ま、宝くじはあたらんけどな」
女性は再びころころと笑いだす。
神崎は女性に笑われ、唇を尖らせたままでいる。
「お姉さんなら即採用や。一応、履歴書送ってや。これからよろしゅうな」
女性がふくよかな手が紗良の手を包む。その手の暖かさがじんわりと心にまで染みこんでくる。その様子を見守る神崎は得意気で、褒めてもらうのを待っている犬のようだ。
「お姉さんと働けるの、楽しみにしてるからね。ほら時間や」
腕時計を見れば出発三分前。走れば間に合う。
お土産を入れた紙袋を神崎から受け取る。
「ありがとう。あと、なんて言うか……」
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