元神さま現る

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 紗良と同じ部内の女性は新人と四十代のベテランだ。ベテランを外すと仕事に支障が出る、新人は給料が安い。同じくリストラとなった他店勤務の同期も話したが、タイミング悪くどうでもいいポジションにいたのが自分たちだったのだ。  旅行にはいい季節である十一月の平日に二日間休みを取ったのも、退職までに有休を使いきろうというささやかな抵抗だ。「多分、抵抗にもなってないんだけど」と同期とは笑いあってきた。 「それでも会社で配るお土産は買わなきゃいけないっていう理不尽」  新幹線ホームから降り、改札内にある土産物店「京日和」へ向かう。改札内にはほかにもっ土産物店はあるけれど、試食を勧めてきたりすることもないので重宝している。勧められると断れずに試食した挙句、買わないのも悪い気がして財布を出してしまう。  そんな心配のない京日和は来れば必ず来店する、お気に入りの土産物店だ。  午前九時半、時間が早いせいか店内はまだのんびりしている。  レジで接客するお兄さんの「ありがとうございました」という声を耳に、店内をさっと見て歩く。会社で配るのは抹茶のお菓子、お母さんに頼まれたお漬物、お父さんにもたまにはお酒でも買って帰ろうか。自分用に和小物もほしい。そんな願いが全部叶うのが京日和だ。     
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