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しかも改札内という立地の良さから、お土産を買いこんでもあとは新幹線に乗るだけであり、荷物にならないというありがたさ。買い物が好きな女性には嬉しいことこの上ない。
「あの、すいません」
声をかけられて振り向けば、先ほどレジで接客していたお兄さん。結構身長があるうえに、イケメンだ。「京日和」と印字された藍色のエプロンをつけている。そのエプロンに神崎とネームプレートを付けている。プライベートでイケメンに声をかけられるシチュエーションはまったくもってなかったため、わずかに心がはやる。
落ち着け、紗良。ナンパでもなければ、一目ぼれしましたという告白でもない。
神崎は紗良の目をまっすぐに見ている。神崎に見つめられた紗良は金縛りにあったように身動きが取れずに、彼の目に引き付けられる。不思議な色をした瞳だ。茶色にわずかに金色が入っている。
「僕のお薦めは下鴨さんです」
「ふぇ? あ、はい」
急に金縛りが解けて、気の抜けた声が出る。あぁ、イケメンの前で情けない。
「駅前からバスで一本で行けます。糺の森にも足を伸ばしてください。お守りは二つ、ご購入されることをお勧めします」
「あ、はい」
二つ? 自分用とお母さん用?
いつの間に持ってきたのか、紗良の手には下鴨神社のパンフレットが握らされている。
「よいお参りを。お帰りの際はぜひ、当店の利用をお待ちしております」
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