元神さま現る

5/16
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
 イケメン店員こと神崎さんに教えられたとおり、京都駅からバスに乗り、下鴨神社で下車する。  案内に従って歩いていくと鳥居が見えてくる。その手前の手水場で手と口を清める。鳥居の前で一礼し、鳥居をくぐる。参道の糺の森をはじめ、木々で囲まれているせいか静謐な空気が漂っている。現代風に言い換えるなら、「マイナスイオンを感じる」だろうか。  少しひんやりとした空気に身が引き締められる。 「立派だわ」  堂々とした楼門を前に足が止まる。出雲大社をはじめ神社は式年遷宮で十数年や数十年に一度、建て替えをしているのは知っている。それでもその昔、現代のように重機などもなかった時代にここまでの建物を建てたのかと思うと、その偉大さに鳥肌が立つ。 「ん?」  私の感動を遮るようにバッグの中でスマホが震える。この振動の長さは電話かと画面を見れば、表示されているのは所属部署の電話番号だ。  お客様からの連絡待ちで引継ぎをお願いした件はあったけれど、難しいものではない。まして引き継いでくれたのは課長代理。トラブルになるようなことはないはずだから、電話なんてくるはずもない。     
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!