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初めての恋は押し売りのようにやってきて、夜逃げのように去っていった。
始まりの気配を味わう余裕も、別れの気配に身を竦ませる暇もなかった。
彼との出会いは、私が主催した合コンだった。
主催したというより、させられた、という方が正しい。
私は当時好きな人がいて、その人に「今後ご飯行かない?」と連絡した。
すると、彼から「同僚が合コンしたいといっている」とだけ返事が来た。
自分が来るとは書いていない。
お断りと実益を兼ねた一石二鳥。よっぽど断ってやろうと思った。
だけど、断れるほど彼への恋心を断ち切れてもいなかった。たとえお断りの合コンであっても、恩を売って彼と繋がっていたかったのだ。
情の深く打算的な私は健気にも合コンを開催することにした。その見知らぬ同僚から連絡が来て、「かわいい子」という不愉快極まりない指定をされて、会場を予約した。
4人同士のオーソドックスタイプ・合コンである。
そして開かれた会は、泥舟だった。
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