泥舟の会

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女性陣は私以外、「明日の朝早朝フライトだから」と言って帰った。 先輩は、いつの間にか姿を消していた。 私も帰ろうとしたら、彼に「残るやろ?」と聞かれて、思わず頷いていた。 戦場を共に乗り越えた者とは、仲間意識が芽生えるものらしい。HABの二次会は大いに盛り上がり、話し、飲み、そして彼らは終電を逃した。 なぜか、終電を逃した男三人を私の家に泊めることになった。 ちなみに、唆したのは彼だ。帰ろうとする私に着いてきて纏わりつき、最後に私が折れた。でも、不快ではなかった。お酒のせいか、彼のせいかはわからない。 六畳間に4人が来て、私と彼はベッドで寝て、同僚と係長は床で寝た。 正確に言うと、3人とも床で寝かせていたのに、いつの間にかベッドに彼が潜り込んでいた。彼は眠っている私を抱きしめ、キスをし、体を触ってきた。 彼のことを、私は一目見たときから気になっていた。顔は愛嬌があるし、話も抜群にあう。一次会のときも、彼ともっと話したくて、普段だと絶対にしないのに席替えも提案した。有体に言えば、一目ぼれだ。 でも、はやる心を理性が抑えていた。 話し方、声のトーン、一言目のタイミング、全てが心地よかった。まるで心を読まれているようにしっくりと来た。その分、怖かった。 私は、「運命の出会い」がそう簡単に転がっていると思えるタイプではない。 たぶん、彼は私以外の女の子にも同じような感想を抱かせられる人だと思った。そして、ベッドで彼の手が触れた時点で、予感は確信に変わった。 彼は信用できない。逃げろ。止めておけ。 その理性のアラートを、私は無視した。 たとえ彼が毒蛇だったとしても、噛まれる前に逃げられる自信があった。 それだけ、私は失うことに耐性があると思っていたし、最後に守るべきものは読み違えない自負があった。 だから、次の日、朝に帰った彼に連絡を取った。 あの夜、一線は拒んだ。それは貞操観念のためではなく、私のプライドを守るための形式的な拒否だった。儀礼的な私を、私は少し嫌悪した。 彼とは、その後2回デートした。 2回目のデートで、彼に告白されて付き合った。 初めての恋愛だった。
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