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恋愛は、麻薬だった。
「犀のようにただ独り歩め」という言葉がある。
私の座右の銘で、それに従って生きてきた。
人はみな孤独だと思っていたし、そういうものだと思っていた。
恋人がいなくても、私は「きれい」に生きていけると思っていた。
私の生きてきた二十余年が培った経験則もルールも、たかが3時間の夜に打ち崩された。
たかが3回のデートで、「彼を失ったら死ぬ」と思うほどに、執着している自分がいた。
そして、それでいいと思っている私がいた。
私は、私に絶望した。
数ヶ月前の私が見たら軽蔑する姿だとさえ思った。
でも、いつも通りの冷たい砂漠へ地獄くだりをする勇気は、私にはなかった。
彼と六畳間で抱き合っている間は、宇宙の中で私たちだけ、「同じ時間を一緒に生きている」感覚が確かにあった。
遠い遠い海を一人で泳いできて、ようやく手に触れたブイを抱きしめた気がした。
たとえ、彼と私をつなげたものが性欲だったとしても、それでいいと思った。
私は、性欲に初めて感謝した。
性欲がこの感情を生むのなら、二十数年共にいた理性を殺してもいいと思った。
そして、別れた。
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