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岩場の向こうは遥かに広がる海だった。いつ来てもそれは変わらない。
彼女は海に住むのだから当然だが、あくまでこの光景はマーさんを含め光琉のイメージに過ぎないのだという。
彼女は海に住む妖精なのだという。しかし、海でなければ生きていけないのか、というとそうではなく、海にまつわるものに住み着くのだという。妖精は皆、そうして世界と関わるのだと、夢一に教えてもらった。
自分に関わるもの、起源になるもの、生み出したものに憑いて世界と交わるのだと。
そして、人間はイメージの中で彼らを見てきた。
伝承の中での彼らが似通いながらもイメージが定まらないのは、見る人によって微妙に現れる形が違うから、らしい。
――どれも間違いではないんだよ。
いつか、夢一が笑いながらそんなことを言ったのを思い出す。
現に今目の前にいるマーさんだって、初めて会った時とは細部が異なる。鱗の色など、初めは赤かったのに今は真っ青である。昨日の海洋生物の特番でナポレオンフィッシュを見たからだろうか。
そんなことを考えていると、マーさんに見られていることに気づく。
「ん? 何?」
「いやあ、なんか今日は楽しそうだなあ、と思って」
「あ、ああ……。人間って案外適当なんだな、と思った」
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