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放課後になり人の少ない廊下。
ファイトー! といった運動部の掛け声や吹奏楽部の演奏が響く。
「あ……あの……」
そんなざわめきの中にかき消されそうな微かな声。
高く可愛らしいそれを聞いた少年は、美少女を想像して鼻の下を伸ばしながら振り向いた。
「俺に何か用で……」
その瞬間、少年は言葉を失った。
少しの間フリーズし、我に帰るやいなや全力で走り出す。
「あ、待って下さい!」
そう引き止める声にも決して振り返ろうとしない。
しかし少年はすぐに立ち止まることになる。
カサカサカサッ
そんな音と共に異様なスピードで少年の前に現れた黒い影。
「ひっ!」
少年は怯えた顔で後ずさった。
「あの、私とどこかでお会いしませんでしたか?」
少し恥ずかしそうに、可愛らしい声でそう尋ねて来たのは…………
紛れもなく、ゴキブリであった。
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