明日はきっと明るいから

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メガネを拾った。 贅沢にケースごと。 拾った理由はくだらなかった。 黒縁のフレームが綺麗で、レンズを抜けばオシャレな伊達メガネに使えるかもしれない。 なんて自分の貧乏性が嫌になる理由だ。 もう日付が変わるという時間。 独身男性が1人メガネをカチャカチャと言わせながら作業をしていた。 しかしまたこのメガネのレンズがなかなか外れない。 溶接されているのではないかというくらいに外れない。 諦めてケースにしまおうとしたところで、ケースから紙のようなものがはみ出てるものが見える。 取り出して読んでみればこう書いてあった。 《メガネを掛けて、視界が明るければ未来も明るい。 》 《その日1日信じられない幸運が訪れます。》 《メガネを掛けて、視界が暗ければ未来も暗い。》 《少しの不幸が訪れ、あなたの視力を少しいただきます。》 なんだ、いたずら目的で置かれたメガネだったのかと溜息をつく。 しかしまぁ、本当に幸せになれるならしてほしいものだ。 デメリットが小さいのも、この手のイタズラにしては面白い。 命や魂じゃないなんて優しいものだ。 そう思うと無意識にメガネに手を伸ばしていた。 掛ける。 なんてことはない。 いつも通り蛍光灯に照らされた自分の部屋が見える。 これは明るいということで良いのだろうか。 なら明日は期待してみよう。 電気を消して眠りについた。
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