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びゃうびゃう! びゃうびゃう!
下で、野犬たちの吠える声がする。ぼくの上った大樹を包囲するようにあたりを回りながら、ぼくを執拗に吠えまわす。その数は、いち、に、さん……八頭ほどであった。
びゃうびゃう! びゃうびゃう!(『腰抜けめ! 降りてこい!』)
野犬たちは吠え続けている。確かに、彼らの牙はぼくに届かないけれど、けれどぼくとしてもここから動くことはできない。ぼくは威嚇をしながら、根競べをする覚悟であった。
そのときだ。
ガウッ。
月の光を切り裂くように、銀色の光が一声とともにひらめくと、次々にぼくを包囲する犬たちを食い散らした。その銀色の光に続くように、次々と茂みから飛び立だした犬たちは、ぼくを包囲していた犬たちを吠えたてていく。樹上に気を取られていた犬たちは、敵の接近に気づけず、新手の出現に総崩れとなった。ほうほうの体で逃げ出していった野犬たちの群れを見届けて、ぼくは地上にぴょんと飛び降りる。そこでは、まるでオオカミみたいな銀色の毛の大きな犬が、金色の瞳でぼくを見ていた。
ずい、と、割って入るようにブルドッグが言った。
『おう坊主、見ねえ顔だが、お前、まさかデンデン組の密偵じゃないだろうな? 犬のくせに木に登るなんて怪しいやつ――』
『丸、やめろ』
遮るように、銀のオオカミは言った。
『この若者は恩人だ。娘をかばって、あいつらを足止めしてくれたのよ――』
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