渡り風の犬、ジロー

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 ぼくは夢を見た。  祐一君に拾われた日、泥だらけだったぼくはすぐにお風呂に入れられた。ぼくはお風呂が大嫌い。泡だらけになったり、ずぶぬれになったり、まったくいいことがない。わしゃわしゃと泡を立てられ、雑にお湯をかけられ、ごしごしとタオルで拭かれ、くったりとなったぼくにドライヤーをかけながら、祐一君は言った。祐一君の首筋には、三つの並びのほくろが覗いている。 『これから、ジローはぼくたちの家族になるんだ』  ぼくにはそのとき、祐一君の言葉の意味が分からなかった。でもね、祐一君。今なら理解できるよ。家族。仲間。それはとても、大切なものなんだってこと。 『……さん……ジローさん……!』  誰かの呼ぶ声がして、ぼくはどこかから引き戻されるとうっすらと目を開いた。そこにはもう泣きだしているハルさんがいて、ずぶ濡れのラインハルトさんがいた。心配そうに見つめる仲間たちがいた。 『ジローさん、よかった……』  ぺろぺろと、ぼくの傷口を舐めながら、ハルさんは泣いてくれていた。ねえ、ミイヤさん。ぼくたちは一匹で生きていくのだと言っていたけれど、あれはまったくの嘘だったね。ミイヤさんの嘘ぐらい、ぼくはすぐわかるんだ。その証拠に、ぼくにはこんなに素敵な仲間たちがいるんだから。
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