渡り風の犬、ジロー

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 このお話は、ぼくの最後を語るお話だ。ぼくがこの世界に生まれ落ちたことを知ってから、そして最後のときを迎えるまでの物語。ちっぽけなぼくの、どこにでもある、ありきたりな人生――いや、犬生譚である。  でも、この物語を聞いたあなたには理解してほしいのだ。ぼくの生きた一生は、ほかのみんながそうであるように、確かに平坦なものではなかったかもしれないけれど、不思議なほどに幸せで、零れ落ちてなお余りあるほどのきらめきに満ちたものだったっていうことを。  最後のときは、ぼくの最初の記憶と同じように、ひらひらと舞い散る満開の桜の下だった。闇の奥から、風に乗って懐かしい香りがする。きみの匂いだ。  願わくば、ぼくと同じように、きみの人生が幸せで溢れますように。
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