渡り風の犬、ジロー

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 ぼくは、花びらの行く先を見上げ、 ぼくの犬生は、いったいどのようであっただろうと考える。  祐一君に拾われて、『ジロー』という名前をもらった。  ミイヤさんや、徳さんや、ラインハルトさんにハルさん。たくさんの仲間たちと出会って、いろんなところを冒険した。この世界のすべてを見てみたいと思った。  君からもらった始まりの名前は、確かに『ジロー』だったけれど、いつの間にかぼくはそこから離れて、みんなからすこしずついろんなものをもらって、ぼくだけのぼくになったのだ。振り返ればぼくの歩いてきた道がある。その犬生はまばゆいほどのきらめきに満ちている。  薄れゆく視界の中で、最後に、あの日のことを思い出す。ぼくが初めて自由を手にした日のことを。
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