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薄暗い実験室。檻の中に、私はいた。鉄格子に鎖で磔にされ、なんとか逃げ出そうと無駄な努力を続けている。情けないことに、涙が溢れて止まらない。怖い。逃げ出したい。もう嫌だ。
長いことそうしていると、一人の科学者が檻の前にやってきた。暗がりでもわかるほどににっこりと歪められた唇に、恐怖する。
「やだぁあああ!!!!」
反射的にそう叫び、檻の壁にさらに体を押し付ける。科学者は気にもとめず、むしろ私の声を楽しむように、じわじわと、靴音を響かせて私に近づいてくる。
「こっちに来ないで!!嫌っ!いやぁあああ!!!!」
科学者は私の腕を掴み上げた。その手には、注射器がある。
「何それ……」
「素敵なものだよ。」
私の中の第六感が警鐘を鳴らしている。今までにない恐怖感に襲われ、私は必死にもがいた。けれども腕を固定されているせいで、泣き叫ぶことしかできない。
じりじり、じりじりと焦らすように注射器の針が近づけられる。
「お願い……やめて……」
息も絶え絶えに懇願したが、科学者は針を私の肌に押し付けた。
「やめて……やめて!やめて!!」
半狂乱になって叫びはじめた刹那、私の体に、得体の知れない液体が注入された。
「ああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!」
ほんの数ミリリットルの液体に、体を侵される苦しみ。私は暴れ周り、苦しみ、泣き叫んだ。体中が気持ちの悪い感覚に包まれ、それが苦しくて堪らず、私は、私が出しているとも思えない叫び声をあげた。
そして、私は異形のものになった。
腕、足、背中には、鋭いヒレが生えた。
科学者は楽しそうに、その様子を観察し、仔細に記録を取っていった。
「私は、いったい何になってしまったのだろう。」
「私は、誰なんだろう。 」
「私は実験体。アマゾンになった、実験体。」
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