私は

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いつの間にか、気を失っていたらしい。私は、朝日の眩しさに目を覚ました。 ……朝日?たしか私は、陽の射さない檻の中にいたはずじゃ…… 私は飛び起きた。私は、どうやらふかふかの甘い香りのするベッドに寝かされていた。 ここはどこ? 周りを見回すと、漫画やネコの小物がたくさん詰まっている本棚や、パステルカラーでお揃いの家具が見られた。 ここに住んでいるのは、女の子かもしれない。 でも、何のために?あの科学者の実験のためだろうか…… がちゃりと、ドアが開かれた。私は驚いて布団をはねのけた。 「あ、起きたんだ!おはよ?。」 そこには、例の科学者の姿はなく、かわりにお盆を持った白い髪の可愛い女の子の姿があった。女の子はお盆をベッドサイドテーブルに置くと、ベッドの端にちょこんと座った。 この子は科学者の手下だろうか。私は、女の子に向けて唸り声を上げ睨み、精一杯の威嚇をした。女の子は驚いたような顔をした。 「こんなところに連れてきて、私に何をするつもりなの!?私が何をしたっていうの?何でこんなひどい事するの!?何で……」 気持ちがぐちゃぐちゃになって、涙になって言葉を滲ませる。女の子は困ったような、それでいて優しい笑顔を見せて、私に手を伸ばした。 「な、何……?」 「大丈夫。ここにはあなたを傷つける人はいないから。」 「嘘だ……!」 「嘘じゃないよ。ねぇ、私のこと、覚えてないの?」 女の子は、私の頬にそっと触れた。無邪気な青い瞳が、私を覗き込む。 「あ……」 その瞬間、私はすべてを思い出した。この子は、私を助けてくれた人。あの暗く、恐ろしい檻から、私を連れ出してくれた人。 「思い出してくれた?」 「うん……忘れててごめんなさい、白音お姉ちゃん…」 また、涙が溢れてきた。私は、お姉ちゃんの華奢な体にすがり付いて泣いた。お姉ちゃんは、私が泣き止むまで、ずっと頭を撫でてくれた。 「もう大丈夫だからね。ハルちゃん。」 その日から、私はお姉ちゃんの妹になった。 私はハル。実験体でも、何でもないハル……
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