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外は秋を間近に控えた、穏やかな気候だった。にも関わらず、五分歩いただけですぐにベンチに倒れ込む私たちは、本当にへっぽこである。
「疲れたね……」
「メイ、今日何時に起きたの?」
「ごめん、十二時」
「じゃあここまで歩いて十分? 近いね、家どこ?」
「駅前に八百屋があるでしょ。あそこを……」
雑談モードになっていると、不意に遠くからチャイムの音が響いた。私たちは申し合わせたように、押し黙る。
この公園の裏手には大学がある。中堅どころの経済大学らしい。その音は、いつも私たちを現実の世界へと引き戻していく。
……今頃、皆は授業を受けているだろうか。
今頃、皆は休み時間をわくわくしながら待っているだろうか。
今頃、皆は……。
〝あんた、寝てるくらいならバイトでもしなさいよ。本当駄目な子だわ〟
学校にも行かず、寝ているか、こうして友達と会う日々。
私は、本当に……。
そのとき、思考を遮るように優しい音色が辺りを包んだ。
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