私たちは生きている

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   それは単調なリズムで、ゆっくりと音階を上げていく。トランペットよりも優しい、ホルンよりも開けた音色。  トロンボーンの音だ。  私は思わず立ち上がる。 「……メイ? どうしたの」  私は二人を残し、そろそろと歩き出す。茂みの向こう、池の畔。譜面台を正面に置き、トロンボーンを吹く女性がいた。    私たちよりずっと年上の人だ。長い髪を風に流されるままに靡かせ、ただただ音楽の世界に没頭していた。演奏しているのはアルヴァマー序曲。吹奏楽の定番曲で、トロンボーンのメロディーパートは少なく今は連符を繰り返しているだけだが、私はその音を聞いて身震いをした。  鳥になって草原の中を羽ばたいていくような爽快感。これから冒険に旅立つようなわくわくするステップ。時になだらかに、時にリズムよく、スライド管を移動させていく。頭の中で主旋律が補完され、壮大な演奏が繰り広げられていく。  後ろからリコとカスミがやってくる。それと同時に曲が終わり、お姉さんの手が止まった。彼女は笑顔で振り向く。  
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