私たちは生きている

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  「吹いてみる?」  お姉さんは一言、そう言った。  私たちは顔を見合わせる。三人で話すときは気兼ねしないくせに、他人に対しては途端に人見知りになる私たちだ。  お姉さんはこちらに近付くと、息の吹き込み口であるマウスピースを丹念に拭いた。 「吹きたそうな顔してるから。私が口付けたやつでよければ、だけど」  三人いる中で、私にピンポイントで差し出してくる。  ……吹けるなんて、一言も言っていないのに。おどおどとそれを受け取ると、その重量感とシルバーの輝きに懐かしさが溢れた。  吹奏楽部所属の私のパートは、トロンボーン。半年ぶりに触れたのでちゃんと音が出るか自信は無い。だが、私は躊躇無くそれに口を付けた。  思い切り息を吹き込むと、ヘロヘロのBの音が辺りに響き渡った。 「おお、音出た! すごい!」  お姉さんが大袈裟に拍手をして褒める。リコとカスミもおお、と声を出した。少し音を出しただけなのに、私はひどい疲労感に襲われた。体が鈍っているらしい。たったこれだけのことなのに、腹筋と唇が痺れている。 「経験者かな? いい音ね」 「すごい、メイ」 「あなたもやってみる? ここだけで音が出るのよ」  お姉さんはトロンボーンからマウスピースを抜くと、手のひらサイズのラッパのようなそれを再度拭い、カスミに渡した。カスミも吹いてみるが、ただ空気が抜ける音だけしかしない。  
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