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お姉さんが、人差し指と中指を自分の唇に当て息を吐く。すると上唇と下唇が震え、ブブブブと音がなった。
「わ、すごい……」
「唇を横に開いて振動させるの。これをマウスピースでやるのよ。すぐできるわ」
池の畔に置かれたベンチに座り、二人は練習した。私も半年ぶりのことでなかなかうまくできず、つられて同じ練習をした。お姉さんは演奏をしにここへ来ているはずだが、何故かそれをそっちのけで私たちに教えてくれる。その甲斐があり、一時間程が経つと二人とも音が出るようになっていた。
いつもは大人しいリコが、興奮して声を上げる。
「……鳴った! でも、唇ヒリヒリする」
「ふふ、慣れないうちはね。でもそのうち唇が厚くなるから」
お姉さんは艶やかしい唇を広げて笑った。
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