2 前途多難(つづき)

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2 前途多難(つづき)

あれぇ。米倉さん、小っちゃくなった。 翌日、出社早々に絹矢に、のんびりした口調で早速言われた。 そしてそれに、未波の胸がズキッと密かに痛む。 未波の大きなコンプレックスの一つ、 152センチの身長は、中学3年の頃からまったく変わらない。 だから今まで、ヒールを履くことで人並みな高さを保ってきた。 だが今日からは、現れた馬脚よろしく、自分の高さを晒すしかない。 「あはは。今日からは、この高さでお願いします」 相変わらずニコニコする絹矢に、未波のほうは歪んだ笑みになる。 しかも、7センチのハンデは大きく、 昨日は、なんとか届いていた仕分け棚の最上段も、 今日は、確実に届かないのは明らかだ。 その現実を前に未波は、ロッカーで作業着のジャケットを羽織っている 無愛想エースに、チラッと視線を向けた。 はぁ、またどんな嫌味を言われるやら。 なんだか朝から、気が重い。 しかし幸いにも午前中は、この懸念からは免れた。
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