3 重い初恋

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「まぁね、彼の場合、言葉も態度も 絶対的に足りないっていうのは有るわよね。 でもね、彼って、ものすごく周りをよく見てるのよ。 それに、ああ見えて、すごく優しいの。 だから困ってる時は、必ず彼がフォローしてくれる。 たとえ、自分の仕事を後回しにしてもね」 そして松本は、隣の絹矢にも「辻上さんって優しいよね?」と尋ねる。 それに絹矢も、はっきりと頷いた。 「うん。辻上さん、優しい。いい人」 じゃあ、私がまだ知らないだけなの、かなぁ……。 独り言のように呟いてみるが、 やはり未波には、彼女たちの言う辻上の優しさは、よく分からない。 そう首を傾げる未波に、松本がやんわりと言った。 「まだね、未波ちゃんは、あそこに来て間もないから。 でもね、きっと分かるわよ」 だから、少しだけ注意して辻上を観察してみるといいと薦められる。 だが、そんなアドバイスを受けて迎えた翌週の始め、 未波に、少しばかりヘコむ出来事が起こった。
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