3 重い初恋

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「未波ちゃん、おはよう」 ここに出向になって数日もした頃から、出勤した未波を 小走りに駆け寄ってくる絹矢が迎えるようになった。 そして、もちろんこの日も、満面の笑みの彼に迎えられる。 「おはよう、智樹くん」 それから、荷物とジャケットを置きにロッカーに向かう未波に、 絹矢は、大きな子犬がジャレつくように付いてくる。 「未波ちゃん、今日もすごく可愛いね」 ありがとう。 既に挨拶のように言われ続ける言葉に、未波も、挨拶のように同じ事を返す。 しかし、次の言葉を交わした途端、にわかに部屋の空気が変わった。 「俺、未波ちゃんのこと大好き」 「私も、智樹くん好きよ」 智樹。 低く辻上の声が絹矢に掛かると、 未波にも、にわかに固まった部屋の空気が分かった。 しかし、それを感じ取っていないらしい絹矢だけが、 キョトンと、部屋の隅で新聞を読んでいた辻上に目を向ける。 そんな彼の腕を、おもむろに歩み寄ってきた辻上が取り、 「ちょっと来い」と、やや引っ張るようにして部屋を出ていく。
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