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そこまで言われて、さすがに未波もハッとした。
そしてその様子に、目の前の矢代が小さく頷く。
「別にね、恋をするのはいいんですよ。
むしろ、私や辻上さんにも微笑ましく映っていました。でも……」
「私、不用意な事を言ってしまったんですね」
矢代は、再び小さく頷いた。
「健常者の中にいた米倉さんに、悪気も何もないのは承知しています。
ですが、障碍者の方々と一緒の時は、
いつも以上に、こちらが心を配らないといけないんです」
そう言った矢代は、事前にそれを伝えなかったと詫びを口にする。
未波は、すまなさそうに眉尻を下げた矢代に、
慌てて、かぶりを振り返した。
「とんでもない。私こそ、もっと早くに気付かなければいけなかったんです。
でも、あの、私どうしたら……」
気付いたと言っても、不用意な言葉は、既に自分の口から飛び出してしまった。
それに、今更ながら、ひどく慌てる。
そんな彼女を宥めるように、矢代は淡く笑いかけた。
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