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「うん。だって私には、仕事が残ってるから」
そして、再び考えるように押し黙った絹矢が、黙ったままで頷く。
こうして4人が部屋を出て行って程なく、未波は大きく肩で息をついた。
気付かなかった甘さは、否めない。
だが、不用意なたった一言で、
この日のメール室は、妙な緊張感に満ちてしまった。
しかも未波には、矢代のアドバイスをどのタイミングで実行すればいいのか、どうにも掴めない。
はあ……。
そして、また口元を掠めた溜息と、ボソリとした辻上の声が重なった。
「昼……」
えっ?
未波は、思わず背後の声に振り返った。
だがそこには、辻上の背中が向いているだけ。
しかし、
「当面、昼は外に行ったほうがいい」
「なんでですか?」
尋ねた未波の声に、ピタリと辻上の作業の手が止まる。
そして、やや冷たい声が再び呟くように言う。
「これ以上、アイツに気を持たせるような事はしないほうがいい」
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