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そんな事は、分かっている。
というか、それをしない為に未波だって、
矢代のアドバイスのタイミングを必死に探っているのではないか。
だが、相変わらず背中を向けたままの辻上は、
そんな彼女の思惑を無視するように、更に言った。
「それと、今日は残業していったほうがいい」
もちろんこれが、帰宅のタイミングを絹矢とズラすためだということは
分かった。
だが、こちらばかりを責められているように聞こえて、
未波は、思わずイラッとくる。
そして、今朝からずっと苛まれてきた自己嫌悪も手伝って、
つい剣のある口調で言い返した。
「分かってます。
私だって、なんとか智樹くんに早く私の真意を伝えようと思ってますし、
一生懸命、タイミングを探してます」
ところが、少し張り上げた彼女の声音に驚いたのか、
背中を向けていた辻上が、ふと振り返った。
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