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「違う」
えっ?
ニコリともしない真っ直ぐな辻上の視線を受け、
思わず未波は、ドキリと言葉を詰まらせた。
しかし、強い眼差しを向ける辻上は、
淡々とした口調ながら、真剣な面持ちで更に言う。
「アイツは、心は少年でも、体は、男としてもデカいほうだ。
それにアイツは、男としてアンタに惚れてる。
だから、たとえ他意のない不用意にでも、これ以上アイツを煽る事があれば
アンタに身の危険が及びかねないってことだ」
言葉が出なかった。
そして、真っ直ぐに見つめられたまま沈黙を挟み、
未波は身動きも取れなくなる。
だが、そんな彼女を解放するように、辻上はふわりと背中を向けた。
「それと、その真意ってヤツは、今日は言わないほうがいい」
えっ?
彼の視線が外れたことで我に返ったように、未波は聞き返す。
それに一瞬だけ押し黙った辻上が、低い声で呟いた。
今日一日くらい、良い夢見させてやってもいいだろ。
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