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それから程なく、開封作業が大分進んだところで、
未波は、矢代から封筒の束をポンと渡された。
「じゃあ米倉さんは、慣れるためにも
あっちで、一足先に、これの仕分けを始めてください」
「あ、はい」
未波は、カッターをその場に置き、
渡された封筒を手に、反対側の壁を埋める棚へと小走りに向かう。
ところが、いざ作業を始めて程なく、問題が発生した。
予想通り、最上段の棚である。
なにせ、7センチヒールの昨日の段階で
背伸びをして、辛うじて届いていた高さだ。
その強い味方のヒールの無い今は、背伸びくらいでは到底届かない。
未波は、足台になる物を求めて周りに視線を巡らせた。
すると、部屋の隅に立てかけられている三段の脚立が目に入った。
だから、
「あの、コレ使ってもいいですか?」
脚立に駆け寄った未波は、
誰にという訳でもなく、それを持ち上げ声を掛ける。
ところが、上司で今日は同じ郵便班でもある矢代よりも先に
答えにならない返事をしたのは、辻上だった。
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