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「智樹、アッチに回ってくれ」
「うん」と、頷く絹矢の声と、「は?」という未波の心の声が重なった。
未波は、思わず仕分け前の封筒と脚立を手に、ムッと辻上を睨んだ。
だが当人は、彼女の視線など目もくれない。
そんな妙な空気の中に割入るように、郵便が配達されてくる。
「おはようございます。今日は、書留が11通あります」
おはようございます。
入ってきた40代くらいの配達員へ、にこやかに挨拶を返した矢代が、
当たり前のように未波へと視線を向けた。
「米倉さん、受け取ってください。受け取り印は、その目の前の箱の中ね」
「はい」
もう、なんか調子狂うな。
脚立と封筒を置いて書留伝票に印を押しながら、
どこか釈然としない胸の内で、小さく溜息を零す。
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