2 前途多難(つづき)

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しかし、そんな未波に、 台車に仕分け分の書類を乗せてこちらに回ってきた松本が、コッソリと囁いた。 「あれでもね、辻上さんなりの優しさなのよ」 ちょっと分かり難いけどね。 クスッと小さく笑う松本に、未波は、思わず顔を歪めた。 「あれがですか?」 しかし松本は、手慣れた様子で仕分けをしながら小さく頷いた。 「ほら、こういう作業って、みんなで一緒にしないとならないでしょ?  だから、ここに脚立を置いちゃうと、ちょっと動き難くなるのよ。 だから、背の高い智樹くんをコッチに回してきたって訳」 ふぅーん。 まぁ、理屈は通る。 それだけに、未波も唸るしかない。 「だからね、高い所の物は、コッチに置いておいてくれれば 私と智樹くんで入れるから。米倉さんは、届く所に入れて」 はい。 この場はこれしかなく、頷いた未波は 再び胸の内で、コッソリ溜息を細くついた。
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