3 重い初恋

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「私、どうも辻上さんって苦手です」 だが松本は、淡く苦笑こそ浮かべたものの、辻上への評価は低くはない。 「確かに、愛想はないわよね。辻上さんだってまだ若いんだし、普通なら、 未波ちゃんみたいな可愛い子が入ってきたら、もう少しウキウキしてもいいもんね」 「いや、私は別に可愛くは……」 松本の褒め言葉に、未波のコンプレックスがズキッと痛む。 しかし、それで思わず口にした謙遜に、絹矢が首を振った。 「未波ちゃんは、可愛い」 ナポリタンのケチャップで口の周りをオレンジにしながら、 真面目腐った顔で、きっぱりと言われる。 それに未波は、思わず細く笑った。 「ありがとう。でも私も、もう『女の子』っていう年でもないので、 別に浮き立ってくれとは思わないですし、無愛想なのは性格なんだって 流すことも出来るんです。 ただ、なんていうか、掴みどころがないっていうか、 何を考えてるか分からないことが時々あって。 それが、なんとなくモヤモヤするっていうか……」
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