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第9章 あなたの体温
わたしはぐったりと力なくされるままになっていた。もう抵抗する力も湧いてこない。それにどうせ、本気で暴れたって敵うわけないし。
向こうは男が三人。密室だし、誰かが助けに来てくれる可能性なんかゼロだ。大きな声で叫ぼうにも何か察されたのか、猿轡がわりのタオルを口にかまされた。
こんな時なのにずっと前、高校の時にリュウから聞かされた言葉が脳裏をよぎる。あれはわたしが自分の家を溜まり場に提供してもいい、と彼に相談した時。マンションの個室は危ない、こんなすかすかの両隣の音丸聞こえの商店街とはわけが違う。そう主張して眦を決してわたしにはっきりと告げた。
その場の空気とか勢いで流れがどっちに転ぶかわからない。密室の中での子どもの集団って、案外怖いものなんだよ。
…あれはこんな意味だったのか。高校の時の友達にこんな卑劣な真似をしそうな奴はいないとは今でも思う。でも、この人たちだって元同級生だし友達みたいな親切な顔つきで寄ってきたんだから。
尤もわたしたちはもう子どもじゃない。大人だから怖くないってことはない、ってことを身を以て知る羽目になった。
「…どう?眞名実。こんなのは」
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